#04 魔の2週間+α
がんの確定診断をするために「針生検」を行ったあと。担当の先生はやはり私が乳がんであることがある程度確定している前提で話を進めて来た。
がんであることはほぼ確定だから、この後は治療方針を決めるための検査をしていくことや、ざっくりとではあるが「乳がんとは何か」「どんな風に治療するのか」といった説明を受ける。頭がだいぶ真っ白になっていたが、何とか理解しようと努める。
「乳がんである」という告知はそれはそれで大変ショックではあったが、すぐその場でわーんと泣くようなことはまだなかった。ぐっと奥歯を噛み締めて堪えていたりした。
しかし診察後に看護師さんに話しかけられ、別室で改めて病状や治療の説明を受けたりしている内にジワジワと涙が滲んで来た。その涙は、主に未知に対する不安と恐怖が主成分のような気がした。
がんって何だろう。何をされるんだろう。何をすれば良いんだろう。
母方の祖母が過去に乳がんで乳房全摘をしていたのだが、私が知っている乳がんの知識と言えばそんな程度だった。
「次回の診察は誰か信頼できる人、家族とか、そういう人と来て下さいね」と言われていたが、一番身近な家族である私の両親は「ここ」から……具体的に言うと550kmほど離れた土地に住んでいる。ほぼほぼ、日本の本州の三分の一くらい離れているのだ。
すぐになんて、来れるはずがない。そんな時間もお金も、無いじゃないか。その日はそんなことを考えながら、メソメソ泣きながら自宅に帰った。
デカい病気をしてしまったのだ……というショックと、何となく予想はしていたけどそれでも勘弁して欲しかったという気持ちと。誰に何をどこまで話せば良いんだろうとか。混乱しているのに目まぐるしく頭をフル回転させて、それを鎮めようと必死で考えた。
とにかく乳がんに関する情報が欲しいと思い、たまたまネット検索で引っ掛かったがんの当事者用SNSに勢いで登録した。不安の吐きどころも欲しかったので、通院のメモを兼ねて状況をSNS日記に書き、公開する。
するとかなり早い段階でSNS会員である当事者の方々(いわゆる、心強い先輩方という訳だ)から反応をいただき、これからどうすれば良いのか、するべきことは何か。具体的なアドバイスを受けたりすることが出来た。これはがん告知のショックで頭が満足に回らない私にとって、大変ありがたいことだった。
しかしそれでも、乳がんに対する恐怖や不安は消えなかった。
自分の病状はどの程度のものなのか。医者は「今すぐ命に関わるものではない」と言っていたが、実際の所はどうなのか。治療は具体的に何をして、それはどの程度生活に支障が出たり影響があったりするのか。
検査結果が出るまでの間はひたすらネットで「乳がん ○○」みたいな色んな言葉をGoogleの検索ボックスに入れて情報を漁っていたように思う。いくら調べたところで、検査結果が変わったりすることはないのにね。でも、止められなかった。
結局、出て来たものは不安を冗長させるような情報が9割、他が1割といった具合だ。落ち着いて前向きに今後の治療に当たっていこうなんて気持ちは、全然湧いてこない。
とにかく不安を鎮めようと動画を見たりゲームをしたりアレコレ気分転換を試みるが、いずれも失敗。一瞬でまた不安が舞い戻る。
そして、割とガチで何も手につかなくなってしまった。仕事も、趣味も、生活に必要なことさえも。結局これは、治療開始までの様々な検査の間……つまりこの3週間程度ずっと続いている。
その間、何をやっていたかというと。
ひたすら何日も何日も一人で自分の部屋にこもってじっとしていること、だった。不安を抱えて、ただただ検査結果を待つことしかできない。こればっかりは、本人の性格とか気質が絡んでくると思う。
私の場合は、何をしようが誰と何を話そうが心が落ち着いたり前向きになることはなかった。あったとしても一瞬で、すぐに気持ちが落ちてしまう。
急に独りぼっちになってしまったような感覚や疎外感が不安に上乗せして襲って来た。
多分それは、これからもしばらく変わらないんだろうと思う。
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