#38 長期療養者就職支援事業を使う

私は一旦仕事を止めて次の仕事を探している間に乳がんが発覚したので、治療を優先するために求職活動を一時停止していた。本当は在宅だろうが単発の仕事だろうが収入を得るために、治療費を少しでも賄うために、とにかく早く働きたくてしょうがなかったが周囲からはまだその段階ではない、焦るな、今は治療に専念しろと諭され今に至る。

それで一年間治療に専念した訳だが、手術が終わり傷の経過もまあまあ良好、手術後の抗がん剤治療も少しは副作用がマシで動けなくはない。なら動くべきだ、ということでハローワークの「がん患者の就職支援を行う窓口」こと「専門援助部門」「長期療養者職業相談窓口」に連絡を入れたのだった。(※部門や窓口の名称は自治体によって違うかもしれない)

実は私、この「専門援助部門」には以前も来たことがある。実際来るまで忘れていたが、長引くうつ病治療を理由に障害者手帳を取得していた時期にもお世話になった窓口なのだ。で、担当の支援員さんは開口一番に言う訳だ。「障害者手帳はまだ持ってる?」と。

早い話が、がん患者として再就職先を探すより障害者として障害者枠に滑り込んだ方が「手っ取り早くて確実である」ということである。(言い方は良くないが。)ちなみに私はとっくの昔に障害者手帳は役所に返納しており、現在は持っていない。

実際、窓口ではがん患者の再就職に関する支援を専門の支援員さんがマンツーマンでアレコレ行ってはくれるが、ぶっちゃけた話、企業側の求人に「がん患者枠」というものは存在しないしがん患者への配慮があるとか病気を受け入れた上で雇う下地や前提が出来ている企業が専門的に登録されているとか、そういうことはほぼ「無い」。

つまりがん患者の就労に対して何の準備も前提も共有されていない企業にがん患者として、もしくはがん患者であることを言わないで(働けるくらい元気ならそもそも個人情報である病気のことは詳細を言う必要はない、というスタンス)、明らかに不利な状態で就職活動しろということである。これはメンタルヘルス系の疾患や発達障害、さらにその他「微妙なラインの持病」を抱えている人も似たようなものかと思う。

あまりがん患者であること、病人であること自体にアイデンティティを置くなとも取れるし、逆に解釈すれば例えがん患者であったとしても「比較的、心身共に元気な人しか採りませんよ」的な思想が透けて見えたりもする。病気や闘病生活は就職活動のための印籠ではない、と。

実際、企業の本音としてはそんなもんだろうと感じる。就労自体は本人の能力や「どれくらいその企業に貢献できるか」という点で合否を測られるだろうし、むしろそれが就職・雇用の前提かつ基本である。

しかしそういう意味で「甘えるな」と言うのであれば、「では具体的な受け皿は?」「受け皿的なものがあるとすれば、そこへのアクセス方法・手段は?」と疑問に思えて来るのである。(多分そんなもんはほとんどないと思われる。ハロワもハロワで相談者やその家族等が中流以上で比較的裕福だと思っている=しばらく仕事してなくても大丈夫だろ的な目で見ている節がある。んな訳あるかい)

もちろんこれは住んでいる自治体、働く自治体によって変わっても来るだろう。実際、東京都では独自に「東京都難病・がん患者就業支援奨励金」という企業向けの助成金制度を設けていて、まあ雑に言えばがん患者を一人雇うと企業には40~60万の助成金が雇用した企業に入るとかそういう仕組みがある。


平成29年度 新規事業
企業側の支援は全国初 東京都難病・がん患者就業支援奨励金を創設します!

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/04/17/11.html


この手の支援が2017年4月の段階で、しかも日本の首都たる東京都でようやく「企業側の支援は全国初」と喧伝するくらいなのだからまあお察しというやつである。早くもっと色んな自治体で、こうして企業を金で釣って欲しいものである。

むしろこういうのは金で釣らないと企業(特に中小企業)は動かないだろう。よほど徳の高い経営者でもない限り。


そういえば先日、国立がん研究センターがん対策研究所が「日本人における予防可能ながんによる経済的負担は1兆円超え」というがん予防における経済効果について推計した研究の発表があったばかりだけれど。


日本人における予防可能ながんによる経済的負担は1兆円超え(推計)適切ながん対策により、経済的負担の軽減が期待される|国立がん研究センター

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2023/0802/index.html


予防もそりゃあ大事ではある。でも、予防し切れなかったら? 予防できなかったお前が悪いと責める訳にも行かないよね? 働きたいけど(いわゆる週5フルタイムで)働けなくなっちゃったがん患者・当事者の機会損失と経済的損失も相当なものだと思うので、行政にはそっちもテコ入れして欲しいと願う次第である。

愚痴が長くなった。

結局、私は自分ががん患者であり現在抗がん剤治療を行っていることやこれから10年ホルモン治療を行うことなど企業側には何も開示せずに「クローゼット」として求人に応募したりしている。
余談だが、髪の毛も生え戻って来た坊主頭そのままである。履歴書用の証明写真を撮ったタイミングでは、確か髪型もソフトモヒカンであった。普通に履歴書の写真見たら「うわなんかやべーやつ応募して来たわ」案件だと思う。

それくらいの気力と体力が戻りつつあるのだ、という見方も出来るが本音で言えばやはり「ほんの些細なことでも良いので、何か自分が出来ることに取り組める環境づくりをした方が良い」と感じる。ぶっちゃけ時給500円でもいい、くらいの勢いで私はどちらかというと「とにかく働きたかった」。

最近思うのは、カネというのは「稼ぐ」ものではなくて「作る」ものだなあと。そしてそのカネを作るために、会社や企業で「働く」というよりも如何に上手く「潜り込む」かという技術や心構えが必要になって来る。この辺はがん患者でなくたって、同様だ。

そして周囲の人たちに見せるタイプの意思決定の確実さ、意志の強さ、本人の問題・課題解決能力、純粋に目指している業務とのマッチングetc...それから、本当に本人の意思でどうにもできない部分というは医療という土俵で何とかするしかないし。

じゃあそれ以外の部分は、となると私は私の頭をアドラー心理学の本で叩いて「ほら、しっかりやれこの野郎!」とハッパを掛けるしかないのである。

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