#54 がんがリンパ節に再発、再び抗がん剤の日々

副鼻腔炎の手術も終わり、術後の経過も良く手術で出来た傷も綺麗に治って来た頃。いつもの3ヶ月に一度の乳腺外科の検査と診察に行った。
いつものようにポートから採血され、いつものように造影CTを撮り、いつものように主治医の検査結果の見立てや診察を受けて薬をもらって帰る……今回もそんな流れだった。

しかし、事態が急変したのはその一週間後。急に乳腺外科の主治医から直接私へ電話が掛かって来たのだ。
内容は「検査結果について伝え忘れたことがあるから早急に受診の予約を入れて来て欲しい」とのこと。「電話では伝えられない内容なんですね?」と一応確認すると「はい」と言われる。

ああ、この流れはアレやな……と察しが良くも気付いてしまう。

予約した直近の日に受診すると、どうやら先日撮ったCTを専門の読影医に念のため回してくれていたらしい。したらばちょうど胸の骨の真ん中、その内側にあるリンパ節が腫れていて、どうもそこにがんが再発したようだ、という。

もちろん、そんな場所のリンパ節なんて手術で取れる場所じゃない。一生に一回の放射線治療も手術後にもうやってしまっている。残った治療方法はもう化学療法だけだ。
一応確認した。「えーと、じゃあステージ的にはもう4扱いで、エンドレス抗がん剤な訳ですね?」もちろん主治医の答えはイエスだ。

そんなこんなでまたケモ室通いの始まりである(3年振り)。

今回の薬は以前も使用したことがある分子標的薬ハーセプチン&パージェタ、そしてそこへ新たに加わるのは抗がん剤のハラヴェンと呼ばれるものだ。「HHP療法」と説明の紙には書いてあったかな。

1クール3週間なのも以前と変わらないのだが、1週目にハーセプチン&パージェタ+ハラヴェン、2週目はハラヴェンのみ、そして3週目はどれもお休み……という若干不規則な流れである。

ほぼほぼ毎週通院やんけ……ほんの数駅とはいえ交通費がかさむ……となったが、私はちょうど別件で去年の10月頃から職場に異動のお願いをしており、先日それが見事叶って通勤用の定期を手に入れていたのだった。しかも経由駅は病院のある駅だ。

何というタイミングの良さだろう。やったぜ。

て言うか今までの職場(のパートのおばちゃん達からのくっっっっっだらないいじめのようなご対応)のストレスでがんが再発してたとしたら一生恨んでやるからな、とは思わないけれど、もう関わることも会うこともほぼ無いだろうからどうでもいい。どうでもいいことは本当に、どうでもいい。
ようやくこの「どうでもいい、くっだらない環境」から物理的に離れて安心して(?)治療を受けながら仕事が出来るというものである。


ちなみに再発かつエンドレスケモ(の予定)のため、職場には今後どう頑張っても隠し通すことは無理だと悟り、部署長であるU課長へまずはこっそり報告→そこから正社員のみに細心の注意を払って私の状況を説明してもらった。
(正社員の皆さんや異動先の事務所で関わる男性職員の皆さんには口止めこそしてもらっているが、色んな人に——それこそ前の職場で私を組織の異物と見なしていじめのような構図を作っていたパートのおばちゃん達にも——いずれポロッと話は漏れるだろう、というのはU課長も私も承知の上である。別にいいですよ今さらそんなん、とは言ってある。)

ストレスやばいんで異動したいとか、副鼻腔炎の手術だ何だ、指定難病がどうだと話して舌の根も乾かぬ内に今度はがん再発の話かー! 課長ごめんマジごめんー!! とか思いながら全部ゲロりました(面接時〜今までも普通に点滴打ったりがんの治療を続けながら仕事通ってました、とか)。

面接時に既往歴としてがんのことを言わなかったのは完全に仕事に受かるための戦略……というか計画的犯行(苦笑)だったので、そこは素直にごめんなさいしました。

したらば課長は少し考えたあと、「自分の親も実は過去にがんで大きな手術をしたことがある」と話してくれまして。「今も(親は)ピンピンしてますよ」、と静かに元気付けてくれたのであった。そして今回、私はその言葉に特にモヤることもなく「私もピンピン組です!」と返すことが出来て良かったと思う。

多分、普通に私はこの人が人間として、職場の上司として入社当初から尊敬出来るし思考や言動や仕事のやり方とその成果が自分にとって好ましい人物だと思っていたから、目の前の問題をきちんと解決・処理出来る人だと感じていたからだと思う。
(余談だが、U課長は某16パーソナリティ診断ではINTJ、つまりは建築家だったらしいと以前小耳に挟んだことがある。奇遇ですねー私も同じINTJなんですわー)

ぶっちゃけ、最初に「乳がんです」って告知を受けた時のショックに比べたら今回の再発のお知らせは「ああそっかーまあ電話の時点で嫌な予感は充分にしてたんだよねー」程度で割とすんなり状況を受け入れてしまった感がある。

人によっては再発・転移の告知は最初の告知よりもショックという話も聞くが、私の場合は再発したのが局所領域かつリンパ節だったからかなと思いつつ。恐らく他の臓器等への転移だったり、新たな腫瘍が身体のどこかに出来ていたり等したら、「終わったな……」と何の根拠も無く絶望感を覚えて、また自分の殻の中に引き篭もったかもしれない。

とにもかくにも、使える薬を使ってがんの治療は今後も続いて行く訳なんだけども……そうなると「生きる」&「生きてる」って具体的にどういう状態のことを言うんだろう? とふと考えてしまう。

心臓が動いていれば生きてる? 何かを感じ取ってそれに自分の意思を返したり出来るなら生きてる? 美味しいごはんが食べられたら生きてる? なんかしっくり来ない。
最近は小説「異邦人」で有名なカミュの不条理哲学に少し元気をもらっていた部分もあるので、ショーペンハウエルと併せてもう少し自分の中の思索を深めていきたいと思う次第。

そしてこれを書いている今は2週目の抗がん剤ハラヴェンの日だが、そろそろ脱毛来るのかなーとビクビクしている。

今回は脱毛時用に使い捨ての不織布キャップを買ったし、病院から勧められたリネアストリア認定サロンに行ってウィッグも買って来てある(仕事用の自然な見た目=人毛ミックスと、どうでもいい時用のかぶるだけのリラックスウィッグ)。

さてさて、どうなることやら……である。



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